みなさんは『おはぎ』好きですか?
私は、とにかく『おはぎ』が大好きです。
この世で一番美味しいと思っているのは、母お手製のおはぎです。
中に入っているご飯のもち米と白米の割合の1:1が絶妙で、それを包むあんこは「これでもか!」と言うほど砂糖を投入する、一見雑に作っているように見せている作り方が大好きです。
しっかり甘く練り込まれたあんこを適当に手のひらに取って、ふっくら炊けたご飯を器用に回しながら包み込んでいくのです。
ご飯の上からあんこを簡単に乗せるだけの手法ではなく、完全にあんこがご飯を包んでしまうのでタイプなので、一口目が味気ないご飯ってことが絶対にありません。
我が家のおはぎは、日本一です(笑)
しかし中学生になった頃、おはぎがスーパーで売られていることに衝撃を受けたのを今でも覚えています。
ずっと我が家だけの特別な食べ物だと思っていたので、軽いカルチャーショックのような感覚を覚えたのは言うまでもありません。
しかも『ぼたもち』という名称で陳列されているではありませんか!
今まで『おはぎ』だと信じていたものが崩壊した瞬間です。
そこで今回は、おはぎとぼたもちの違いに迫っていきます。
どこからどう見ても同じものに見えるおはぎとぼたもち、何がどうのように違うのでしょうか。
調べていくと面白いことを発見しましたので、そちらも一緒にご紹介していきます。
目 次
おはぎとぼたもちの3つの違いとは?
おはぎとぼたもち。
結論から述べますと、両者は同じ材料で作られていますので、基本的には同じものと考えて間違いはありません。
では一体、何が違うと言うのでしょうか。
調べてみると、明確な違いが3つありました!
早速、一つずつご紹介していきます。
おはぎとぼたもちの違い・・・その① ~食べる時期~
おはぎとぼたもちは、食べられる時期が違います。
両者を漢字に変換すると一目瞭然ですね。
おはぎ・・・・お萩
ぼたもち・・・牡丹餅
それぞれ、春と秋の花の名前が入っているのがわかります。
実は、ご飯を包んでいるあんこ(小豆)の粒は、その季節に咲く『牡丹』と『萩』に見立てて表現していたのでした。
ぼたもちは、牡丹餅(ぼたんもち)がいつしか『ぼたもち』と呼ばれるようになります。
おはぎの方も、萩餅(はぎもち)をより丁寧に『お』をつけてお萩餅(おはぎもち)としていましたが人知れず『餅』が略されるようになって、現在の定番の名称『おはぎ』とされるようになりました。
おはぎとぼたもちの違い・・・その② ~形状~
おはぎとぼたもちは、形と大きさが違います。
おはぎ・・・・お萩
ぼたもち・・・牡丹餅
先程もご紹介した通り、『ぼたもち』は牡丹の花をかたどっていますので、丸く大きく豪華に作りあげます。
『おはぎ』の方は、秋の七草の赤紫の花をかたどっていますので、小ぶりで長めの俵型に作られています。
おはぎとぼたもちの違い・・・その③ ~あんこの種類~
おはぎとぼたもちは、実は使われるあんこの種類が違います。
おはぎ・・・・粒あん
ぼたもち・・・こしあん
あんこといえば『粒あん派』と『こしあん派』に分かれると思いますが、おはぎとぼたもちの違いを知る上で、ここはしっかりと分けて考えていきましょう。
あんこに欠かせない材料が『小豆』ですよね。
おはぎとぼたもちのあんこの種類が違う理由は、この『小豆』に秘密が隠されていました。
小豆の収穫時期は、品種や地域によって異なりますがだいたい8月~10月です。
収穫したての小豆は皮までとても柔らかいので、一緒に潰して餡に使うことが出来るのです。
しかし冬を越した小豆の皮は固くなってしまっているので、そのまま餡に練り込んでしまうと食感が悪くなってしまいます。
そこで皮を取り除くというひと手間を加え、美味しく食べることが出来るようにしたのです。
もうお分かりですね。
小豆の収穫時期に重なる頃に食べられるおはぎには、皮まで使った『粒あん』を使用し、一方、冬を越した後に食べられることになるぼたもちでは、固くなった小豆の皮を取り除いた『こしあん』を使うというわけです。
小豆の収穫時期が、おはぎとぼたもちに使うあんこを変えていたなんて、面白いですよね。
『秋のおはぎは粒あん』
『春のぼたもちはこしあん』
これまでは春・秋を使い分けてきましたが、現代では保存の技術が向上や品種改良したお陰で、春でも皮のまま美味しく食べることが出来る小豆が登場しています。
もしかしたら既に『秋は粒あん』『春はこしあん』と分ける理由が、なくなってしまっているのかもしれませんね。
おはぎとぼたもちには更に別名が存在する?!
ご飯をあんこで包んだお菓子であるおはぎとぼたもちが、季節によって名前が変わる理由はわかりました。
春・・・牡丹の季節の『ぼたもち』
秋・・・萩の花の季節の『おはぎ』
「え?じゃあ、夏と冬におはぎが食べたくなったら、どっちの名称を使えばいいの?」
なんて、疑問に思いませんか?
安心してください!
おはぎには春と秋だけでなく、夏ヴァージョンと冬ヴァージョンの名称も存在していますよ!
春夏秋冬で名前を変えるおはぎ。
出世魚みたいで、実に面白い。
おはぎの別名・・・夏ヴァージョン『夜船』
早速ですがここでちょっとだけ、お餅をついている風景を想像してみてください。
季節は正月間近。
臼には炊きたてホカホカのもち米が入っていて、それを杵でペッタン、ペッタン。
聞こえてきますよね?ペッタン、ペッタンと、お餅をつく独特の音が。
しかし、おはぎに使われているご飯は杵と臼で、ペッタンペッタンつくことをしません。
もち米とお米を混ぜて炊いたものを、擂り粉木(すりこぎ)で半つぶしにしたものをあんこで包んでいるのです。
この『餅つきの音がしいない』ところから、お隣の人がいつ餅をついたのが分からない『つき知らず』といい、更に、夜には船がいつ着いたか分からないという意味の『着き知らず』に変換。
そこから『夜船(よふね)』と呼ばれるようになりました。
謎掛けみたいで、面白いですよね。
おはぎの別名・・・冬ヴァージョン『北窓』
冬も、夏と同様で変換系です(笑)
餅つきといえば、臼には炊きたてホカホカのもち米が入っていて、それを杵でペッタン、ペッタン・・・ですよね。
でも、おはぎには使うご飯は杵と臼でペッタンペッタンと、つくことをしません。
この『餅つきの音がしいない』ところから、お隣の人がいつ餅を搗いたのが分からない『搗き知らず』といい、北の窓からは月が見えない『月知らず』に変換。
そこから『北窓(きたまど)』と呼ばれるようになりました。
『搗き知らず(つきしらず)』という言葉を変換させる、連想ゲームのようなネーミングセンスは、昔も今もあまり変わりませんね!
おはぎ・ぼたもちがお彼岸のお供え物になった経緯
しかしお彼岸が近づくとスーパーやコンビニ、デパートなどで広く売られるのでしょうか。
それは、おはぎやぼたもちがお彼岸にお供えする食べ物とされているからに他なりませんね。
時は江戸時代。
当時のお彼岸や四十九日の忌明けでは、おはぎを食べるという風習が巷に定着していました。
小豆の赤色には、身に降りかかる厄難を防御するおまじないの効果があると信じられており、邪気を払う食べ物として古くから信仰があったことから、ご先祖様への供養と結びついたと言われています。
お彼岸中というのは仏道修行に勤しむ期間ともされていて、日本では祖霊崇拝の習慣と合わさります。
江戸時代当時に貴重品とされる砂糖を使ったおはぎをご先祖様にお供えすることで、自分自身の功徳をも積んでいたのですね。
甘くて美味しいおはぎは、スペシャルなお菓子だったのです。
また『暑さ寒さも彼岸まで』という言葉がありますが、これは春のお彼岸は農作業を始める時期で、秋のお彼岸は収穫の時期にあたります。
春は収穫をもたらす山の神様を迎えるためのぼたもちお供えし、秋は収穫を感謝しておはぎを作ったとも言われています。
そしておはぎは、あんこともち米の二つを合わせるところから『ご先祖様の心と私たちの心とを合わせる』という意味で始まったという説もあるのです。
小豆の赤色が魔除けに良いとされているのは有名な話ですが、おはぎにはそれ以上の思いや願いが込められていたのですね。
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おはぎとぼたもちの3つの違いと別名の謎!なぜお彼岸に供えるの? のまとめ
多くの人に愛される、おはぎとぼたもちについてまとめました。
・萩の花を模したもの(小さい俵型)
・秋の食べ物
・粒あんを使用
・牡丹の花を模したもの(大きくて丸型)
・春の食べ物
・こしあんを使用
『おはぎ=萩の花』『ぼたもち=牡丹の花』というのは想像がつきやすいですが、形や大きさ、あんこの種類までもが明白に分けられていたことは知りませんでしたね。
現在において、春でも秋でも殆どが『おはぎ』と統一して呼ばれるようになっています。
せっかく季節で区別されているのですから、日本の風情を忘れないためにも、その時の呼び名で呼んでみてはいかがでしょうか。