人はこの世を去る時『戒名』を授かり旅立っていきます。
自宅に仏壇がある人はご覧になったことがあると思いますが、ちょうど中央に鎮座している漆塗りの位牌に、金の文字で書かれる3~11文字の漢字が『戒名』です。
戒名って何なのでしょうね。
故人を偲ぶのなら、俗名(生前名乗っていた名前)で記したほうがよっぽどわかりやいと思いませんか?
実は戒名とは、仏門に入ってお坊さんになったという証に、師匠となる僧侶から授かる名前のことを言います。
しかし、どんなに尊い名前をつけてあげたいと願ったとて、これまでかかった入院費やお葬式代のことを考えると・・・たった数文字に30万円も50万円も100万円も!なんて、とても払えたものではありません。
いっそ、戒名はナシ!という手はないものでしょうか?
そこで今回は、戒名をつけなかったら故人は成仏できないの?今は経済的に苦しいから、少しゆとりが出てから授かる方法も有りなの?戒名って他の国ではどうしているの?という疑問を解消していきます。
目 次
戒名がないとどうなるの?故人が成仏できないって本当?
私たち一般人が僧侶から授かる戒名とは『死後戒名』、すなわち死んでしまってから名乗る名前の事を言います。
戒名には師匠の、弟子への「こんなふうに成長して欲しい」という思いが込められていますので、ご家族から故人の人柄などを窺って、その人をイメージする戒名をつけてくださいます。
熱心な信徒は僧侶と同じく、生前に戒名を授かるなんてことも珍しくはありません。
それだけ戒名とはとても大切なものと、認識されています。
その戒名を亡くなった時に授からなかったら、故人の魂は報われないのでしょうか。
成仏出来ないのでしょうか。
結論から言うと、戒名を授かろうが授からなかろうが、亡くなった人にとって何ら関係はありません。
戒名がないと成仏できない・・・と、言うことは一切ありませんので、ご心配なくです。
「じゃあ、戒名なくてもいいかな?」と、安易に考えるのはよろしくありませんよ。
どういうことかと言うと、戒名あっての僧侶であり、葬儀や法要の読経なのです。
一銭もお布施を納めない故人のために、今の僧侶が無償でお経をあげるなんてことは相当稀なことです。
ですので、お布施も戒名もなしの場合は、宗教的な葬儀が執り行えないのが常識となっています。
先祖代々の菩提寺やお墓があるなら尚更、住職には嫌がられますし、お墓に入ることを許されない可能性が出てきます。
しかしあくまで可能性の話ですので、菩提寺に事情を話し相談すれば戒名はなくとも生前の慣れ親しんだ名前で供養して頂けることもあります。
寺院によっては、「戒名がないと読経など出来ん!」なんて怒鳴られるような場合もあるそうなので、葬儀社の人に話と通してもらうか、そのような対応をしてくれる寺院を招いてもらえば万事解決です。
『葬儀の時に僧侶が読経し、戒名を授からなければ故人は成仏できない』という、固定観念が根深く浸透していますが、戒名の有無や良し悪しは成仏とは全く関係ありません。
戒名を授かることが成仏する条件であるなら、生前どんなに悪い行いをした極悪非道な人物でも、お金を出して戒名をつけさえすれば成仏出来ると言うことになってしまいます。
それはちょっとおかしな話ですよね。
しかし、普段から慣れ親しんだ葬儀が執り行われなかったり、お墓があるのに入れなかったりという問題が発生するかもしれませんので、菩提寺に相談されるか、一番ランクの低い戒名を授かる形を取れば解決です。
戒名は後からつけるのってアリ?
亡くなってから数年経って、やっぱり戒名を授かりたいと思う人はいます。
先祖代々だったり、親戚や知り合いの故人に戒名がついていたりしたら、「うちも!」ってなるものです。
そんな時は菩提寺(納骨している寺や霊園の僧侶)に、菩提寺がなければ最寄りの寺院で戒名を頂くことが可能です。
お布施を納めて戒名を授かるということは、その寺院の檀家としてお付き合いが始まりますので何かと出費(年会費や管理費など)が発生する覚悟が必要です。
いやいや、そこまでは・・・という人は、ネットの僧侶に頼んで戒名を頂くことも出来ます。
便利な世の中になりましたね。
その際は、最も安いもので十分でしょう。
後は、自分達で故人にふさわしい戒名をつくる方法もあります。
一章でも述べたとおり、戒名がついていることと成仏することには因果関係がない以上、故人を称える『院号』として自分たちで考えた戒名をつけることに何ら問題はないのです。
戒名制度は日本だけの風習なの?
実は『戒名』というものは日本独自のものです。
実際にカンボジアで「この国の戒名はどのようになっているのか」を窺った回答が、「そういう習慣はない」でした。
同じ仏教なのに戒名がないなんて、何とも奇妙な話ですよね。
そもそも日本で戒名が使われだしたのが室町時代で、皇族や貴族や武士など身分の高い人のみに与えられていました。
この頃はまだ、仏教徒に縁遠かった庶民には戒名が行き渡らなかったそうです。
江戸時代になると日本の仏教は檀家制度によって、寺院が民衆を統治・支配する権力機構に組み込まれ、庶民を管理するようになりました。
限られた檀家を相手に生計を立てなくてはならなくなったある僧侶が、収入源の一つとして思いついたシステムが『死後戒名』だったです。
しかし実は、お釈迦様の仏教で『死後戒名』のことは説かれていない事実をご存知でしょうか。
『戒名と成仏に因果関係がない』と言い切れるのは、まさにそこにあるのです。
葬式や年忌法要などの儀式で、死者の徳となり幸せにするという考えが世の中の常識となっていますが、本来の仏教の教えにはなかったことなのですよ。
日本の仏教はお釈迦様の教えに反しているとしか言いようがないのです。
戒名がないとどうなるの?後からつけるのってアリ?日本だけの風習のまとめ
一般の人が仏門に入る時、つまり出家して寺院や山中で修行し戒律を守る僧侶となろうとする人に、師匠から心機一転して頑張るようにと与えられる名前が『戒名』です。
今風で言うなら『芸名』や『ペンネーム』みたいなものにあたるのではないでしょうか。
仏弟子になった証の戒名を授からなくても、故人が成仏できないということはありません。
私たちは一般人なわけですから、戒名がなくても問題はありません。
神道やキリスト教や無宗教などの人に『戒名』なんてありませんが、成仏出来なかったなんてことはないですよね。
ただ、寺院には寺院の考えがあり、戒名がない場合は様々な問題にぶち当たることもあります。
先祖代々となると、戒名は頂いたほうがいいのかもしれません。
わざわざ高い料金のお布施をしなくても、『ネットで戒名を依頼・自分で戒名を作成・俗名で』など、戒名には色々な選択肢があります。
自分の納得できる落とし所で決められたら良いのではないでしょうか。