『秋の七草』をご存知でしょうか。
ちょっと聞き慣れない言葉ですよね、『秋の七草』。
似たような言葉で『春の七草』というものがありますが、春の七草は厄払いと、お正月に食べる豪華なおせち料理で食べ疲れをおこしている胃腸を休めるという意味から、お粥にして食べる習慣がありますよね。
しかし秋の七草は、お粥や煮付けにして食べるというものではなく、目で見て楽しむ観賞用の草花なのです。
そして、直接何かしらの行事を行うものではありません。
そこで今回は、秋な七草についてまとめました。
なぜその草花が七草として選ばれたのか、どのような種類があるのか、覚え方までをご紹介していきます。
目 次
秋の七草って何?
秋の七草・・・。
七草と言っても観賞して楽しむ草花ですので、春の七草のように葉っぱばかりではありません。
まずは、全種類の名前をご紹介しますね。
萩(ハギ)
桔梗(キキョウ)
葛(クズ)
藤袴(フジバカマ)
女郎花(オミナエシ)
尾花(オバナ)
撫子(ナデシコ)
知っている名前もあれば、聞いたことはあるけどどんな花なのか想像できないという花もあるのではないでしょうか。
秋を代表する花として有名な、コスモスやキンモクセイなどが選ばれなかったのにはどんな理由があるのでしょうか。
そこには、日本人では誰もが知っている・・・知らなくても一度くらいは名前を聞いたことがあるであろう、1人の歌人の詩に由来していました。
秋の七草は山上憶良の詩が由来
秋の七草は、万葉集に80首もの詩が収録されている山上憶良(やまのうえのおくら)が詠んだ詩がもとになっています。
山上憶良は660年に誕生し、733年に亡くなったとされていますが、正式な生存期間はわかっていません。
しかしこの年代を本当に生存していたとしたら、山上憶良は73歳まで生きていたことになります。
現代でこそ100歳というのは珍しくはありませんが、当時の平均寿命は30歳前後・・・。
それから比べると、山上憶良の73歳はバケモノレベルの超長寿ということになりますね。
話が脱線しましたが、万葉集に収録されている山上憶良の80首のうちの二首に、次のような詩が残されていました。
(秋の野に咲いている花を、指を折って数えてみれば、七種類の花がある)
(ハギの花、尾花、葛、撫子の花、女郎花、藤袴、朝顔)
一首目は、秋に咲く草花を数えている詩です。
二首目は、秋の花の名前を挙げています。
古来より、日常を散策しながら、その時・その季節の草花などを歌に詠むことがトレンドでした。
貴族出身の山上憶良もまた四季折々の詩を詠み、上記の二首に登場する草花が秋を代表する『秋の七草』として認知されるようになったのです。
山上憶良が生きた時代には、多くの情報が飛び交うことがありませんでした。
自動車や飛行機といった乗り物さえ、存在していませんでした。
今のようにセカセカすることなく、優雅に、ゆったりまったりとした時間が流れていることから、四季の移り変わりを愛でることがなによりの楽しみだったように感じますね。
秋の七草の花の種類と覚え方!
秋の七草は、次の7種類の花でしたね。
萩(ハギ)
桔梗(キキョウ)
葛(クズ)
藤袴(フジバカマ)
女郎花(オミナエシ)
尾花(オバナ)
撫子(ナデシコ)
なお、それぞれの草花には薬効成分があり、古くからは民間薬・漢方薬として使われてきました。
あわせて順番にご紹介していきます。
萩 はぎ
学 名/ Lespedeza thunbergii
和 名/ 萩
別 名/ 庭見草・野守草・初見草
科名属名/ マメ科 ハギ属
開花時期/ 6月~10月頃
見 頃/ 9月
花言葉/ 柔軟な精神・思案・内気
薬用部分/ 根(婦人のめまい、のぼせなどに効果あり)
萩は、昔から日本人に広く愛されてきた花のひとつです。
日当たりがよく水はけのよい土に栽培すれば、病気になることもなく元気に成長してくれます。
桔梗 ききょう
学 名/ Platycodon grandifloras
和 名/ 桔梗
別 名/ アリノヒフキ。ヨメトリバナ
科名属名/ 桔梗科 桔梗属
開花時期/ 6月中旬~8月中旬
見 頃/ 6月~7月
花言葉/ 清楚・気品・誠実・従順・永遠の愛
薬用部分/ 根(桔梗の煎剤に去痰作用あり)
鎮静・鎮痛・解毒作用のほかにも、抗炎症・鎮咳降下作用なども認められます。
去痰・鎮咳薬として、痰・気管支炎・咽頭痛などにも用いられています。
特 徴/ 開花前は花びらのふち同士がくっついたまま膨らみ、つぼみが開いて星形の花をさかせます。
山上憶良の詩の中に『桔梗』の名前はありませんでしたが、実は『朝貌(あさがお)』と表現されている花こそが桔梗を指しているのです。
当時は、朝に咲く花をまとめて『朝貌』とよんでいたそうですよ。
葛 くず
学 名/ Pueraria montana
和 名/ 葛
別 名/ 裏見草
科名属名/ マメ科 クズ属
開花時期/ 8月中旬~9月
花言葉/ 芯の強さ・恋のため息・活力・治癒・根気・努力
薬用部分/ 根(葛根は発汗・解熱・鎮痙薬として有名)
熱性病、感冒、首・背・肩こり以外にも、めまいや悪寒の症状にも用いられます。
藤袴 ふじばかま
学 名/ Eupatorium japonicrm
和 名/ ふじばかま
別 名/ 香草・蘭草
科名属名/ キク科 ヒヨドリバナ属
開花時期/ 10月~11月頃
見 頃/ 9月
花言葉/ ためらい・遅れ
薬用部分/ 全草(水製エキスには血糖降下作用や利尿作用などがあり)
他にも、糖尿病・浮腫み・月経不順などにも用いられます。
ふじばかまは、1cmにも満たない小さな花を房状に咲かせますが、その茎や葉からは桜餅のような香りが立ち込めています。
中国では、芳香剤として使われていたそうです。
女郎花 おみなえし
学 名/ Patrinia scabiosifolia
和 名/ おみなえし
別 名/ 粟花・思い草
科名属名/ スイカズラ科 オミナエシ属
開花時期/ 7月~10月中旬
花言葉/ 約束を守る
薬用部分/ 根・全草(鎮静・抗菌・消炎・浄血などの作用)
腸炎による腹痛・下痢・肝炎・腫痛・婦人病などに用いられます。
溶血作用があるため、連用は避けた方がよく、強度の貧血の場合には用いてはいけません。
小さくて黄色い花をつけるおみなえしは、茎の色も花と同じ黄色で染まっているのが特徴です。
尾花 おばな
学 名/ Miscanthus sinensis
和 名/ ススキ・おばな
別 名/ かや
科名属名/ イネ科 ススキ属
開花時期/ 8月~10月
見 頃/ 9月
花言葉/ 活力・生命力
薬用部分/ 根(解熱や利尿作用)
特 徴/ 草が茂っている様子が『すすき』で、穂が出た状態は動物の尾に見たてて『尾花』
撫子 なでしこ
学 名/ Dianthus
和 名/ なでしこ
別 名/ 片見花
科名属名/ ナデシコ科 ナデシコ属
見 頃/ 6月~7月
花言葉/ 長く続く愛情・貞節・純粋な愛
薬用部分/ 全草・種子(消炎・利尿・通経薬として)
水腫・小便不利・淋疾・月経不順などに用いられますが、妊婦さんは流産の可能性があるため使用することはできません。
秋の七草の覚え方
秋の七草の覚え方は、五・七・五・七・七の短歌を詠むようにするとリズム感があるので覚えやすいですよ。
オバナ・ナデシコ 秋の七草
ちなみに、春の七草も、五・七・五・七・七でリズムよく覚えませんでしたか?
スズナ・スズシロ これぞ七草
秋の七草って何?由来は山上憶良の歌で花の種類を一挙公開!覚え方ものまとめ
山上憶良が詠んだ詩がきっかけで、秋の七草は広く親しまれる秋代表の草花となりました。
しかし昨今は時間の流れが早すぎて、四季折々の草花を愛でることも、気に留めることもなくなりました。
実は今回紹介した『秋の七草』の、桔梗とふじばかまは絶滅危惧種として登録されている花です。
これから先、もしかしたら『秋の七草』として、生の花を見ることができなくなるかもしれません。
時の流れについていくことも重要かもしれませんが、今年の秋は野原を散策するくらいの、心にゆとりをもってみてはいかがでしょうか。